得たいのは「しょうがない」
どうなることやら。沖縄県知事選挙。
台風の中の二人
屋内。屋外で台風が吹き荒れているのが、時々の強風の音や雨の音でわかる。
◎ 仲井真さんしか、今の沖縄県政を上手に経営していける人はいないだろうね。
△ それはどうして?
◎ だっておまえ、新聞や革新政党は「オール沖縄だ、オール沖縄だ」って煽り立てるのに、普天間移設問題を解決して沖縄の経済振興や将来ビジョンを実現できる人は他にいないよ。
△ それほど厚顔で強引なヤツはいないということか。
◎ 悪く言えば、そういう言い方もあるかもだ。
△ 普天間移設問題の解決というのは、仲井真知事が行った埋立承認しかないのかね。
◎ だって、政府はどれほど沖縄側が要求しても我関せずで「理解を求める」だけだよ。ここは現実的にならなきゃ、いつまでも政府と対立していては、大田革新県政の二の舞だ。
△ 1998年の「県政不況」か。
◎ そう。我々は政府のおそろしさを嫌というほどみたはずだ。
△ 考えてみれば、あれ以来、自公選挙協力で沖縄は稲嶺・仲井真と保守県政が続いたんだよね。
◎ それぞれが二期で四四十六年。
△ 十六年経っても造れないのは、それなりに問題があるからであって、その問題を政府は何一つ問題として認識しようとしない。
◎ 辺野古は新基地建設だから反対という理屈だろ。私もそのことについては理解するが、しかし普天間の危険性除去は危急を要するのも確かだ。
△ だが、日米両政府は危険性除去のためというより、シュワブへの移設は「長期的に持続可能な米軍のプレゼンスを確かなものとする」とはっきりと言っている。
◎ それは日米両政府からみたらそうだろう。しかし沖縄からみれば、仲井真知事のいうように危険性除去という側面が大きい。
△ つまりこうか。日米両政府からみれば、沖縄の米軍基地を長く維持するための移設だが、沖縄からみれば、住民の命と財産を守るためと。
◎ そうだよね。
◎ いるが、周辺が市街化した普天間での事故や被害より、過疎地の方が相対的に被害は少ないし、比較すればその方を選択するのは私はしょうがないと思う。
△ そう、「しょうがない」なんだ。政府が我々に「理解を求め」続け得たいのは、我々の理解ではなく、我々の「しょうがない」なんだ。
◎ そういう意味では、我々は政府の求めに呼応しているんだね。しかし、現実というのは何らかの選択をしなければならない。四四十六年は長い、そろそろ結果を出さなければ。
△ それに、基地問題だけが沖縄の重要な問題ではない。君が最初に言った経済振興や将来ビジョンの実現も、するどく現実的で重要な直面している課題だ。
◎ そう、そういう意味でも、仲井真さんしかいないんじゃないかなと私は思ってるんだ。
△ 私には、そういう意味でも、仲井真さんじゃないんじゃないかと思えてならないんだが。停電も復旧したし、風雨も少し弱くなったみたいだから、いまのうちに移動してしまおう。
◎ 腹も減ったな。
△ 人は喰わねば生きられぬ。「物呉いしど我御主」という言葉もあるが、そこいらへんも含めて、話の続きはあらためて落ち着いて飲みながら。
◎ 看板飛んでこなければいいけどな。
二人。駆け足で外に、雨の中に飛び出して行く。
photo by NASA Goddard Photo and Video